ゾーニング 2003/09/16*4

 いやまだ、中央公論の連載は読んでないのですが。「新現実」1号前半の対談は、なかなか面白かったので、探してみようと思います*1

 「新現実」の対談の方では、セキュリティ意識の肥大について、町内会が監視カメラを設置する場合を例に挙げ、その個人情報流出の危険さと、一方で、今、そこで痴漢問題やら犯罪やらに心配する町内会の人に、そうした問題を、どう啓蒙するかの難しさを述べており、なかなか刺激的でした。

 ここで、東氏(id:hazuma)は、ある種のセキュリティ管理の行き着く先としてゾーニングを持ち出す。ゾーニングが無批判に肥大した末には、情報が自動的に振り分けられ、ある情報を拒否した人は、一生、その情報を知らずに済む。東氏は、「誤配の可能性」の立場から、そんな社会を危惧していました。

 まぁ人間誰しも見てるものは違うし、そこにおいて、交わらない部分は、いつのどこの社会でもあるわけですが、デジタルによる管理が、それに加わった時、それらが暴走していく可能性は、しっかり見すえ、ゾーニングの意義と範囲について考えなければいけない、というのは確かだと思います。

 そういうゾーニングが、一番たやすいのは、言うまでもなくネット上です。

 2chの書き込みを見ることに特化した2chブラウザというプログラムがありまして、これには「透明あぼーん」という機能がついている。

 2chにおいても、問題のある書き込みは、管理側の人間によって削除されることがあり、これを「あぼーん」と呼びます。「透明あぼーん」は、自分で削除する記事内容を設定しておく機能です。

 例えば、スレッドに無関係な内容を延々と書き込むコピペ荒しがうざいような時、コピペ内容を登録しておけば、そうした書き込みがすべてブラウザによってフィルタリングされ、そういう書き込みが成されたこと自体、気づかずに2chを見られるというわけです。

 これは荒らしに限らず、嫌いなやつのハンドル(コテハン)を登録すれば、彼の発言が存在しなくなる。同じスレッドを見ているにも関わらず、環境によって見ている現実が違う。そんな現実は、既に存在してるわけです(ま、実際問題、今んとこ、そんな大きな差にはならないでしょうが)。スラドの「しきい値」も似たような話ですね。

 このへんの機能は、現在は使い方が面倒なため、よくわかっている人が自覚的に設定するわけですが、そのうち使い方がよくわからん人のために自動化されちゃっていく……みたいなことは十分ありうる。

 「はてな」における東氏と俺の関係も、ゾーニングの良い問題となりうるでしょう。

 「粘着荒し」を排除するゾーニングは、当然、あってしかるべきですが、一方で、そのゾーニングを、どう正当化するか、どうして「ここまではオッケー。ここからはまずい」と言えるのか、という議論は大切だと思います。今でも、ちょっとしたプロクシ(フィルタ)をかませば、自分のページのコメントから、嫌いなやつのIDを自動で消すくらい、簡単にできるわけですしね。

 そういう問題は、最初に書いた、町内会の監視カメラの問題に直結していくのでしょう。「だって、うちの子が痴漢にあったらどうするんだ!」という切実な問いに応えるのは、並大抵のことではありません。そうした問題に、基礎となる枠組みと考えの材料を提供するであろう「情報自由論」に期待しようと思います。

*1:東京近辺で、バックナンバー揃ってそうなお店ありますかね?