伊藤剛氏の発言は、どこが気持ち悪かったか

たしかに、腐女子的な視線に対する、男子オタのホモフォビアにもとづく反発はあるだろう。だが、彼らは弱く、臆病なだけなのだ。自分が誰かの欲望の対象になること(もっといえば、愛されること)が怖くて仕方がないのだ。だから、あまり気にすることはないよ、と思う。さらに強くいえば、腐女子を攻撃する心理と、彼らが「モテない」原因は、実は同一のものだったりする。

http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20040816

 まず気持ち悪かったのが、発端となったこの文章。
 この文章の、何が気持ち悪いかというと、相手を思いやるような書き方をしていて、その実、まったく相手の立場に立っていないからである。

 ここで、伊藤氏は、二次創作やおい好きの女子に対する「反発」を前提としている。
 元々のemifuwaさんの発言とはずれているが、そういう自体はあるだろう。
 二次創作やおいという趣味に対する反発・迫害は実際にあるだろうし、それによって消極的になる場合もあるだろう。

 そういう場合を考えた場合。
 迫害を受ける側は被害者で、迫害する側は加害者である。
 それなのに、伊藤剛氏は、「加害者の事情」について、聞かれもしないのに語り出す。それって、おかしいだろう。

 まず、人間というのは、目立つ集団に対し、本当にどうでもいい理由で差別をする動物である。男子だろうが女子だろうがオタだろうが非オタだろうがモテようがモテなかろうが、「腐女子」差別をすることはあるだろう。その被害の中には、気にせずに済ませられる程度のものもあれば、もっと深刻で悲惨な害もあるだろう。

 伊藤剛氏は、「腐女子」に対する反発の全てを「男子オタ」と決めつけ、矮小化している。

 で、その男子オタの心が、弱くて臆病だ、ということだが、そんな加害者の事情は、被害者には全く関係あるまい。
 弱くて臆病だからといって、被害が小さいとは限らない。弱く臆病な個、あるいは集団が、大きな暴力を振るうことはいくらでもある。
 ここでも被害の矮小化がなされている。

 つまるところ、伊藤剛氏の言っていることは、「おまえは被害者と思っているだろうが、おまえの感じている被害というのは、一部の心弱い連中のたいしたことないものに過ぎない。そんなものを気にするな」という、独善的な押しつけと取れる。

 言い換えると、こういうことだ。
 痴漢に遭うのが嫌なので、満員電車を避けようという女性がいたとする。
「満員電車に乗ればいいじゃん。どうせ痴漢なんてのは、臆病で弱い一部の男だけなんだから、あまり気にすることはないよ」
 というのが、伊藤剛氏のアドバイスだ。

 以上は、この発言が、そう読める、というレベルの話。