オタクとは……市場モデル的に

 大ざっぱに言って、「オタク市場」と呼ばれるものは、20代前半から30代くらいに至る層で、見込める数は、数千から10万。平均が1〜2万というところ。

 いわゆる「萌え系」の作品、ギャルゲ、エロゲの購買層は、この中に集中している(相関が非常に大きい)と考えていいだろう。

 この層の特徴は、一人頭の購買数が多いこと。つまり、広く薄く買われた結果が、1〜2万本なのではなく、同じメンツが大量に買っている結果の1〜2万本、というわけだ。誇張して言うなら、オタクは、気に入った商品があれば、全部買うのだ(限界はあるけれど)。

 エロゲ、オタク向けのコンシュマーゲー、アニメDVDなんかが、おおむね、この1〜2万。普通は、最大で十数万程度。サクラ大戦が、この手のギャルゲー最大の三〇万本を叩きだした。

 ま、実際問題、よっぽどのことがない限り10万で頭打ち。その代わり、それなりに固定客が見込めるので、単価の高いものを数千本だけ売って利益を出すこともできる。

 このあたりから、平均的なオタク像を見いだすと、月数万から十数万の金を、オタク系商品に費やす人、と考えられるだろう。

 一人一人のオタクは、もちろん、嗜好の違いを持っている。ゲーム中心に買うやつもいれば、アニメ中心に買うやつもいる。一方で、かなり重なってもいる。エロゲを買ってるやつは、アニメDVDか、コンシュマーゲーか、ライトノベルか、SFか、講談社系ノベルスかの、どれかも買ってる可能性が、極めて高いのだ。このへんをオタク系ジャンルと呼んでも構わないだろう。

 逆に、オタク系でない一般人は、マンガ、ゲームの類に投資する金が非常に少ない。その代わり、潜在的な数は多い。

 オタク層と非オタク層は、もちろん、完全に二分できるわけでなく、そんなに金を使わないオタクも、結構使う一般人もいるわけだが、分布として見れば、大きく分かれている、と考えて間違いない。

 さて、以上のような理由から、単価の高いものほど、オタク層の購買力が強くなり、単価の低いものになれば、一般層の力も効いてくる。

 コンシュマーゲー、7000円、エロゲ1本8000円や、アニメDVD1クール分4本、1万5千円也を買うような層は、オタク中心に分布する。*1

 一方、小説、マンガの、一冊4〜700円を買うような層だと、一般人の力も、大きく効いてくる。

 このへん、感覚と経験で物を言ってるので、具体的な数値リソースは示せない。間違ってると思うなら、流していただいて構わない。

 逆に言うと、数十万単位で売れてる市場は、確実に、基盤をオタク以外のところに持っている、と言える。

 このモデルの意味は、一つは、オタク層というのを、具体的な集団として定義できることである。「オタク系作品」を、データに基づいて定義できる。*2

 また、ある作品が、オタク系購買層の中に入っているかどうかで、オタク的か、そうでないかを分けて考えることができる。

 前に話題にした宮崎アニメは、「魔女の宅急便」以降、観客動員数が、数百万から数千万なので、オタク系購買層のみを基盤にしていない、とは容易に言える。もちろんそれは、アニメオタクも見に行った、という可能性を否定するものではない。そのへんは、モデルの限界でもある。

 このモデル単体では、オタクの精神的な方向性とかは語ることができない。もちろん、このモデルからピックアップした、オタク系作品をベースに、そうした精神的な方向性を語ることはできるだろう。

*1:アニメの場合、きちんとスポンサーを見込めるものは、一般層向けで、数百万人(視聴率は1%が100万人だ)を対象にしている。スポンサーが見込めず、DVDの売り上げで取り返そうというビジネスモデルの場合、完全にオタク層が中心となる。

*2:ここで俺が挙げているデータは、俺の頭の中にあるだけのもので、ちゃんとしたデータは出せない。一応、多少の経験とリサーチしたので、そこそこマシな値だと思っているが、外れているかもしれない。参考程度と思って欲しい。モデルの意味として重要なのは、データを取ることで、どんどん改善し、客観的に語れるということだ。