エヴァの構造

さて、上記に描いた通り、大衆娯楽作品において、全体性というのは部分が相乗して、観客を引きつける力を持つことを意味します。

この意味で「全体性」というのは、「お話がきちんと完結する」「深遠なテーマガある」ことは意味しません。まぁ、そういうのが王道ですが、そうでない全体性もありうる。

エヴァが、それです。
ああいう風に、ちゃぶ台に料理を一個一個並べて、最後に全部ひっくり返す、というのも、部分の効果が相乗するという意味で、立派な全体性です。
相手を怒らせることで、作品に大きな感情移入を呼んだわけです。

二度は使えない手ですから、普通はやりませんが、効果はバッチリです。古典的な反則技ですね。そういう意味で、エヴァは、娯楽作品らしい全体性を持っていた、といえるでしょう。

ファウスト氏、東氏は、「全体性を持っていないのにエヴァが受けた」→「エヴァポストモダン」と短絡していますが、この場合は、「作品のテーマは破綻したけど、それによって全体性を得た」→「だから大ヒットした」と取るべきでしょう。