最初にあるのは、タイプムーンの同人ゲーム「月姫」の分析。佐藤によると、月姫の画期的な点は二つ。

 一つ目は、商業的な宣伝なしで、インターネットを前提とした口コミによって大きなムーブメントを作るに至ったこと。
 もう一つは以下。

 本来的には二次創作の場であるはずのコミックマーケットという同人誌即売会で発表され、商業作品に匹敵する販売数を達成し、それを超えたクオリティを有する作品が生まれてしまったこと。オリジナル=一次創作であり、かつ商品として流通するレベルの同人作品の登場は、オリジナル/パロディの二項対立を揺るがし、分割線に疑問を付すだろう。

 重箱の隅とは思うが、これについては指摘をしておきたい。
 コミックマーケットは、同人即売会であり、その中には一次創作物や批評・評論、そのほか、様々なジャンルのものが含まれる。「本来的には二次創作の場」などではない。理念上、二次創作を優遇するものでもない。
 無論、今のコミケに出回る同人作品のうち、数と資金でいえば、二次創作がメインなのは間違いない。だから「事実上、二次創作をメインとするコミックマーケット」ならいいんだけどね。

 オリジナル/パロディの二項対立を揺るがす、というのも微妙におかしい。「月姫」以前から、非商業のオリジナルは存在するし、商業に乗るパロディも存在した。
 「月姫」が揺るがしたのは、「商業=高クオリティ=大部数」「同人=低クオリティ=少部数」という固定観念だろう。