Winnyとか

http://www.hirokiazuma.com/archives/000093.html
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 東氏の主張と、切込隊長氏の批判。
 心情的には、東氏に賛同。
 現行の著作権は、メディアの変化によって変わる必要がある。どう変わるかは、今、たゆたっているが、俺としては、それを良い方向……知的資源を独占する方法を模索するのではなく、より多くの知的資源を皆が共有できる方向に進めたい。

 人間が考えるということは、頭の中でぼんやりと何かを妄想することじゃない。
 土台となる材料を元に、様々なことを分析し、その結果を表現し、他者と共有することだ。そうすることで、互いに思考を磨き合うことができ、それによって、様々な素晴らしいものが生まれる。
 だから行き過ぎた知的所有権という言葉は、しばしば、考えることすら否定することになる。
「これについて引用したり批評したり分析したり模倣したりしちゃ駄目!」
 というのは、つまり、
「これは見るだけ! 考えちゃ駄目!」
 というのと同じなのだ。
 CDを売ってる人は、それでも構わないかもしれない。映画を売ってる人も。家電を売ってる人も。
 物が売れればいい、というなら、別に、それについて考える人がいなくても構わない。

 けれど、そうして考えることを否定するのは、確実に次の世代、次の次の世代において、世の中を悪くする。それは誰にとっても悲惨な結果となる。俺はそう思う。

 で、Winnyである。東氏の心情には賛成だけど、つっこみどころがあまりにも多すぎる。切込隊長氏の主張は、そこを鮮やかに切り取っている。新たな社会を望むんだ次は、その社会を、どう作り出すかを考えないといけない。

 俺、個人の見解を書く。
 Winnyでは、様々なファイルが流通している。合法的なファイルもあり、それにまつわるコミュニティも面白いことになっているが、当然ながら非合法ファイルも多い。
 中で、これは、えぐいな、と思ったのは、エロゲである。

 その週に発売するエロゲが、ほとんどすべて、発売日より早く、Winnyで手に入る。秋葉あたりでフライングゲットした連中が、その日のうちに流すのである。

 エロゲの市場というのは、小さい。一部のヒット作をのぞけば、千本、二千本の世界で、争ってる業界なのだ。Winnyで、売上げが数百本減れば、それは死活問題になる。死活問題というのは、文字通りの意味だ。弱小メーカーのほとんどは、ゲームが一本売れなかった時点で潰れるし、それは時には、関わった個人の破滅も意味する。

 もちろん、Winnyでダウンロードした人間が、Winnyが無ければそのゲームを買ったか、と言えば違うだろう。Winnyで試しに落として面白そうだったから、店で買ってみた、という宣伝効果だって多少はあるかもしれない。Winny程度で潰れるような不安定な経営に、そもそも問題があった、と、言えるかもしれない。
 ただ、総体的に見て、Winnyは、まず間違いなく、弱小エロゲメーカに対する脅威だっただろう。

 昔懐かしいWeb割れ*1とかだと、ダウンロードがなかなか終わらなくて、イラついて気になった挙げ句に、ついつい買うつもりもなかったゲームまで買っちゃう、なんて微笑ましいこともあったんだが、Winnyの早さ、便利さは圧倒的だった。

 47氏の逮捕は不当だと思うし、そもそも今のような、デジタルデータをパッケージで売る形自体が、将来的には修正を迫られるのかもしれない。

 世の中を変える、というのは綺麗事ではなくて、そこには大きな摩擦が起きる。
 最初に書いた通り、俺は、著作権の概念は、見直しを計るべきだ、と、信じている。ただ、そこで、今、現在、Winnyの効果によって破産した人間がいるのだ、という事実を、そういう人を思い描く想像力を捨ててはいけないと思う。

*1:匿名でレンタルしたウェブサイトに、分割したファイルをアップロードする形の違法ソフト交換